教育長の辞職について[後編]|武蔵野市議会レポート
こんにちは、武蔵野市議会議員の本多夏帆です。前編から少し間が空いてしまいました。こどもも大人も体調を崩しやすい時期、皆さまもお気を付けください。
さて、前回の記事では、教育長の辞職について①任命から辞職までの経緯、②同時期に起きていたもうひとつの問題(議決を抜かしてしまった追認案件)について説明しました。
教育長の辞職について[前編]|武蔵野市議会レポート | 武蔵野市議会議員 本多夏帆 オフィシャルサイト (honda-natsuho.info)
今回の後編では、臨時会での質疑や私見について述べたいと思います。
臨時会での質疑
前編と少し重ねてになりますが、2024年5月9日、臨時会が開催されました。当初は、物品購入(教科書)が2,000万円以上となり議決が必要だったのにそれが漏れ、その支払いのために追認するという手続きのための臨時会開催でした。
が開催日の直前になってから、市長・担当副市長の減給についての議案が提出され、その2つについて主に取り上げる会となりました。
まず、物品購入についてはどのように取り扱うかが事前に議会で話し合われましたが、通常通り議案が出ていたとすれば文教委員会に付託されることになるため、同様に臨時会でも付託しようということで、文教委員会で議論されることに。
私も文教委員だったので、そこで質疑をすることになりました。
【文教委員会での質疑】


主な質疑は以下の通りです。
▼なぜこのような事態が起こったか?
・概算の段階で2,000万を超えていたが、従来通りの簡略化した手続きをとってしまった。
・前回同じ事案で1,955万円とギリギリだが、アラートなし。
▼チェック体制についてどうなっていたか?
・指導課が担当だが、課長含め最初のチェック時点で気付かなかった。
・そのまま順番に進み副市長決裁までとっていたが、その後の支払い段階での会計課が気づいて差し戻した。
▼臨時会開催の意味は?
・追認自体は法律で定めがないが、判例において瑕疵が治癒される(法的に問題のない状態になる)解釈になっている。
・支払期限が5月15日であったため、臨時会開催をお願いしこの9日となった。
▼今後の取り組みは?
・物品購入で2,000万円以上は議決が必要という認識不足があるため、組織的に研修を実施する。
・規則について変更し、マニュアルなど運用も合わせて全庁的に見直す。
このような質疑がなされ、ある程度の事実を確認。見直しを求めるのは当然として、もはやこの案件自体は追認せざるを得ないことから全員が賛成。
責任については次に出てくる減給の議案にて、本会議に戻って全体での議論へと進みました。
【本会議での質疑】
さてここからは本会議、委員会とは異なり全員での質疑体制となります。ある程度事前に会派で質問内容を相談してはきていますが、他の質疑を聞きながら突発的に質問するということも。
まず今回提案された減給については、議決を抜かした件と教育長の辞職についての2件が一緒になっているというのがひとつのポイントです。

一緒くたになったことによって、何がどのような責任の取り方となったのか、よくわからなくなってしまいました。宮代議員から、その配分はどうなっているのか聞きましたが、明確な答えは得られず。
また、金額や期間については特に決まりがないため、過去の武蔵野市の責任の取り方や他自治体の事例を参考にしたとのこと。
こうした根拠がよくわからないことについての質疑が多い中、教育長の辞職についてもここで議論されることに(文教委員会では物品購入のことしか話題には出せなかったため、本会議で話に上がることになりました)。
▼なぜ処分について知りながら議会に共有しなかったのか
・新教育長について過去の所属組織である大学からこの3月にハラスメントを原因とする処分が出され、議会に事前説明をしたあとにそれを知り、議会日程までもう数日と間がなかった。しかしそれを言ってしまうと言い訳にしかならない。
・処分について不服申し立て期間中であった。
・処分について匿名で公開されていたため、公開してもよいものなのかと考えた。大学にも取材を申し込んだが、匿名の公開であることから一切答えられないと断られた。
・いったん議案を取り下げようかとも思ったが、さまざまな調査をし総合的な判断でそのまま議会の日を迎えた。
▼これからの人事案件はどうしていくのか
・議会とやり方について協議したい。
・今回賞罰についてといった確認はしなかった、今後は確認する必要がある。
▼次の教育長についてどうするのか
・なるべく空席の期間を短くしたい。
・現在鋭意選定中である。
このようなことが質疑からわかりました。議事録は速報版が掲載されています(確定版が出ると議事録のページにて検索いただく必要があります)。
今回の件についての私見
会派ワクワクはたらくとしては、以下について特に問題認識を持っています。
- 人事案件は公にできない情報があるからこそ、慣例で議会に対し事前に調整がなされてきた。その信頼関係を損ねる行為。
- 一方、明確な基準がない責任の取り方に、今後の前例となることも鑑み疑問が残る。
- 教育長の件も議決を抜かした件も共通して、長らく指摘してきたリスクマネジメントについて、やはり対応がなされていないのではないか。
また、質疑でも取り上げましたが、
- 賞罰ありだから即NGということではなく、そうしたさまざまな情報が提供されたうえでそれでも選任したのだという説明が必要。
- (特に議決が抜けた件について)小さなミスが大きなミスに繋がる、定期監査でもミスが減っていない。命に影響するようなことにもなりかねない。
- (特に議決が抜けた件について)誰に謝罪しているのか、何を悪いと思っているのかわからない。
ということもあります。謝罪については、臨時会を招集することについて申し訳ないというような発言にも聞こえるところがありました。
私たちはそんなことを手間に思っているのではないと伝えましたが、「市民の税金を正しく使う」ということが求められているのだと、もっと強く自覚したうえで謝罪をと思いました(ここはやり取りの中で伝えきれなかったなと反省しているポイントでもあります)。
▼ハラスメントの事実確認について
なお、ハラスメントがあったかどうかについての質疑も白熱していましたが、市長は他組織のことであるためここで断定的に発言することは控えたいと話されました。私たちもこの考えに賛同しています。
本件について事実確認をすることは容易でなく、議会の場で憶測でものを言うのは避けるべきと考えました。とはいえ調査の中でさまざま情報は入っているにせよ、個人情報にあたる内容です。かなり細かな情報まで発言されている議員もいましたが、公開され、議事録としても残る、公の場でやることではないと思います。
今回問題であったのは議会の判断に必要であろう情報を共有しなかったこと、市長が議員時代に所属されていた会派(自由民主・市民クラブ)からも、「隠し事のない市政をというのが公約だったはずだ」と厳しい声が上がりました。
市長は組織のトップとして、判断の連続であることは間違いありません。議会は二元代表制の一翼として、市長の判断を助ける立場にもあると思います。
正しいとひとことで言っても、その正しさというのは非常にあいまいなものです。
だからこそ情報共有をし、熟議熟慮のうえで判断を積み重ねていく、これが先人の知恵であり、私たちそれぞれが今もなお全うすべきことです(えらそうに書きましたが、これを全うするのはそう簡単ではないと議会の場で常々感じています)。
6月13日からいよいよ議会定例会がスタートします。市長が代わってから、毎月のように大きな議論があり、休みなくさまざま調整を行っている気がします。
変化の激しい時代だからこそ、スピーディーな判断・変化が求められています。
今回は記事作成にとても時間がかかってしまいましたが、常にタイムリーな発信を心がけ、定例会に臨みます。ご注目ください。
- 毎日のタイムリーな情報はXで発信しています。ぜひフォローをお願いいたします!